書店や図書館には独特の魔法があると思いませんか? 古書の並ぶ静寂の中で、埃の舞う光の筋、時間の重みを感じる革表紙の触感、そして何より、一冊の本を開いたときに広がる無限の可能性。今回は、そんな「知識と魔法が交わる瞬間」を捉えた「古書店の魔術師」というコンセプトでAIアートを生成する旅に出ることにしました。
最初に思い浮かんだのは、古い書物に囲まれ、魔法の杖を手にした長い髭の老人。そんな定番のイメージから始めて、試行錯誤を重ねながら、より個性的で魅力的な作品へと昇華させていく過程をお伝えします。この記事では、AIアート生成において最も重要なプロンプト(指示文)の作り方に焦点を当て、一つの作品が完成するまでの思考プロセスを丁寧に解説していきます。
最初のインスピレーション:古書店と魔術師のイメージ
AIアート生成において、最初の一歩は明確なビジョンを持つことです。「古書店の魔術師」というテーマが浮かんだとき、私の頭の中には以下のようなイメージが広がりました:
- 古い書物が天井まで積み上げられた狭い店内
- 埃っぽい空気に漂う神秘的な雰囲気
- 長い髭を持つ老魔術師が本を開いている瞬間
- 本から放たれる魔法の光や浮遊する文字
これらのビジョンを実現するため、最初に考えたプロンプトは次のものでした:
最初のプロンプト試行(草案)
* 古い書店で魔法の本を扱う謎めいた魔術師、浮遊する本、輝く埃の粒子、隠された知識
* mysterious wizard in ancient bookstore, magical books floating, dust particles glowing, hidden knowledge
このプロンプトを元に生成されたイメージは、確かに「魔術師」と「古書店」の要素は含んでいましたが、どこか平凡で、私が心に描いていた神秘的な雰囲気には遠く及びませんでした。AIが生成したイメージは、ありがちな「白い髭の老人が書棚の前に立っている」というものでした。ここからさらに改良を重ねる必要があると感じました。
プロンプトの進化:具体性と独自性を追求する
最初のプロンプトの問題点は、表現が一般的すぎることでした。「謎めいた魔術師」「古い書店」といった言葉では、AIは一般的なイメージしか生成できません。より具体的な描写と独自のビジョンを盛り込むことにしました。
第2回プロンプト試行
* 17世紀風の古書店の中で、半透明の姿をした若い魔術師、指先から青い光を放ち、革装丁の古書が宙に浮かんでいる、暖かい夕暮れの光が窓から差し込み、埃の粒子が金色に輝いている、隠された錬金術の知識
* Semi-transparent young wizard in a 17th century bookstore, blue light emanating from fingertips, leather-bound ancient books levitating, warm sunset light streaming through windows, dust particles glowing gold, hidden alchemical knowledge
このプロンプトでは、以下の点を改良しました:
- 時代設定を「17世紀風」と具体化
- 魔術師の姿を「半透明」「若い」と詳細に
- 「指先から青い光」という動作の追加
- 「革装丁の古書」と本の種類を明確に
- 「暖かい夕暮れの光」と光源の性質を追加
- 「錬金術の知識」と魔法の種類を特定
結果は前回よりも大幅に改善され、幻想的な雰囲気が出てきました。特に光と影の表現が効果的で、古書店の神秘的な雰囲気が感じられるようになりました。しかし、魔術師の姿がまだ「一般的な魔法使い」のイメージから抜け出せていないという課題が残りました。
物語性とディテールの追加:シーンに命を吹き込む
AIアート生成において、単なる「絵」ではなく「物語を感じさせる一場面」を作ることが、作品に深みを与えるポイントです。次は、魔術師のキャラクター設定や、シーンの背景ストーリーを考え、それをプロンプトに反映させることにしました。
第3回プロンプト試行
* 下関の古い港町にある秘密の古書店、魚の鱗のようなきらめく模様の長袍を着た東洋と西洋の特徴を併せ持つ謎の魔術師、風に舞う彼の銀色の髪、手のひらの上で回転する星図が描かれた古書、海からの潮風で本のページがめくれる、窓から見える満月の光に照らされた古い港、藍色と金色の魔法の光
* Secret ancient bookstore in an old port town of Shimonoseki, mysterious wizard with both Eastern and Western features wearing a robe with shimmering fish-scale patterns, silver hair flowing in the wind, ancient book with star charts rotating above his palm, pages turning in the sea breeze, old harbor illuminated by full moon visible through the window, indigo and gold magical light
このプロンプトでは、以下の要素を新たに追加しました:
- 舞台を「下関の古い港町」と私の地元に設定し親近感を持たせる
- 「魚の鱗のような模様の長袍」という独特の衣装描写
- 「東洋と西洋の特徴を併せ持つ」と魔術師の出自に物語性を
- 「風に舞う銀色の髪」と動きの要素を加える
- 「星図が描かれた古書」と本の内容を具体化
- 「潮風でページがめくれる」という動的な描写
- 「窓から見える満月の光に照らされた古い港」とより広い背景世界を示唆
- 「藍色と金色の魔法の光」と色彩を明確に
この試行で生成された画像は、前回よりもさらに個性的になりました。特に魔術師のキャラクター性が強くなり、地元下関の港町という要素も加わったことで、ありきたりな「西洋風ファンタジー」を脱することができました。しかし、まだ画像の焦点があいまいで、複数の要素が競合している印象がありました。
フォーカスと構図の調整:視覚的なインパクトを高める
良い作品には明確な焦点が必要です。次のステップでは、画像のメインとなる要素に視線が自然と集まるよう、構図や焦点に関する指示を追加することにしました。
第4回プロンプト試行
* 狭い古書店の中央に立つ魔術師、彼の周りを螺旋状に浮遊する古い魔道書、指先から放たれる青い光が本のページに言葉を書き込んでいる、埃と魔法の光が混ざり合う空気、棚から零れ落ちる羊皮紙の巻物、魔術師の顔に落ちる神秘的な影、背景のぼやけた無数の蝋燭の灯り、精密な構図とシネマティックな照明
* Wizard standing in the center of a narrow bookstore, ancient grimoires floating in spiral around him, blue light from his fingertips writing words onto book pages, air filled with mixture of dust and magical light, parchment scrolls spilling from shelves, mysterious shadows falling across wizard's face, blurred background of countless candles, precise composition with cinematic lighting
このプロンプトでは以下の点を改良しました:
- 「狭い古書店の中央に立つ」と構図の中心を明確に
- 「螺旋状に浮遊する」と視覚的なダイナミズムを追加
- 「指先から放たれる青い光が本のページに言葉を書き込んでいる」という具体的な行為を描写
- 「魔術師の顔に落ちる神秘的な影」と光と影のコントラストを強調
- 「背景のぼやけた無数の蝋燭の灯り」と奥行きを作る要素を追加
- 「精密な構図とシネマティックな照明」とイメージの質に関する指示を含める
この試行では、画像の焦点が明確になり、魔術師と浮遊する本という中心的な要素が際立つようになりました。光と影のコントラストも効果的に表現され、より劇的な印象を与える画像に近づきました。ただ、下関や港町といった地元色が薄れてしまったという新たな課題も生まれました。
芸術的スタイルと技術的指示の追加:個性をさらに強める
最後のステップでは、特定の芸術的スタイルや技術的な表現方法を指定することで、作品に独自の個性を与えることにしました。また、前回で薄れてしまった地元の要素も復活させます。
最終プロンプト
* 下関の古い港を見下ろす塔の最上階にある隠された古書店、月明かりと魔法の光に照らされた部屋、東洋と西洋の特徴を併せ持つ魔術師が宙に浮かぶ古い魚皮紙の魔道書に向かって指先から藍色の光で文字を書き込んでいる、彼の長い銀髪と魚の鱗模様の長袍が風に舞う、棚から溢れる古書と羊皮紙、空中に漂う金色に輝く魔法の粒子、窓の外に見える満月と漁火、レンブラントとジブリを融合させたような光と影の対比、超高精細なディテール、映画のような構図
* Hidden ancient bookstore at the top floor of a tower overlooking old Shimonoseki harbor, room illuminated by moonlight and magical glow, wizard with both Eastern and Western features writing with indigo light from fingertips onto floating ancient fish-skin parchment grimoire, his long silver hair and fish-scale patterned robe flowing in the wind, ancient books and scrolls overflowing from shelves, golden magical particles floating in the air, full moon and fishing lights visible through window, Rembrandt meets Ghibli-like contrast of light and shadow, hyper-detailed, cinematic composition
この最終プロンプトでは、以下の要素を統合しました:
- 「下関の古い港を見下ろす塔の最上階」と独特の立地と視点を設定
- 「魚皮紙の魔道書」という地元の漁業と結びついた特殊な素材を導入
- 「窓の外に見える満月と漁火」と下関の夜景を背景に加える
- 「レンブラントとジブリを融合させたような光と影の対比」と具体的な芸術スタイルを指定
- 「超高精細なディテール」と画質に関する技術的指示を追加
この最終プロンプトで生成された画像は、私が当初想像していた「古書店の魔術師」の概念を大きく超え、より個性的で魅力的な作品となりました。東洋と西洋の要素が融合した魔術師、下関の港町を背景にした独特の舞台設定、レンブラントの光と影の処理とジブリの幻想的な雰囲気が混ざり合った芸術スタイルが、唯一無二の作品を生み出しました。

完成作品と振り返り
最終的に1024×1024ピクセルサイズで生成された「古書店の魔術師」は、私のビジョンを見事に具現化したものとなりました。半透明のような質感を持つ銀髪の魔術師が、魚の鱗模様の長袍をまとい、浮遊する古書に向かって指先から藍色の光で文字を書き込んでいる様子。その背景には下関の夜の港が広がり、月明かりと漁火が窓から見えています。
この作品を通じて、AIアート生成における効果的なプロンプト作成の重要ポイントを整理すると:
- 具体性を高める:「謎めいた」ではなく「東洋と西洋の特徴を併せ持つ」のように具体的に
- 独自の要素を加える:「魚の鱗模様の長袍」「魚皮紙の魔道書」など一般的でない要素
- 物語性を持たせる:単なる描写だけでなく背景ストーリーを感じさせる要素を含める
- 構図と焦点を明確にする:「中央に立つ」「螺旋状に浮遊する」など視覚的ガイドを加える
- 芸術的スタイルを指定する:「レンブラントとジブリを融合させたような」と参照点を示す
- 技術的な質を指示する:「超高精細なディテール」「映画のような構図」などの指示
- 地域性や個人的背景を活かす:「下関の港」など自分ならではの要素を組み込む
プロンプト作成は、単なる言葉の羅列ではなく、創造的なビジョンをAIに伝えるための「翻訳作業」だと言えるでしょう。最初のシンプルなプロンプトから始めて、試行錯誤を重ねながら徐々に理想の作品に近づけていく過程は、それ自体が創作活動であり、AIとの共同制作の旅なのです。
皆さんも、ぜひ自分だけのユニークなビジョンをプロンプトに込めて、AIアート生成の可能性を探ってみてください。次回は、このAIアート作品をさらに活用した創作展開について紹介する予定です。お楽しみに!
画像はUnsplashより、AIアート生成の参考イメージとして使用しています。実際のAIアート作品は最終プロンプトを使用して生成されたものです。
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