はじめに
皆さん、こんにちは。今回のブログでは、私がAIアート生成ツールを使って「雲上の都市」という作品を創り上げるまでの試行錯誤の過程をご紹介します。雲の上に浮かぶ幻想的な都市、地上から切り離された理想郷的な空間を表現したいという思いから始まったこのプロジェクト。アイデアの発想から完成に至るまでの創作の旅路をお伝えします。
「雲上の都市」のコンセプト誕生
下関の海辺でサイクリングをしていたある朝、空を見上げると層になった雲が重なり、その隙間から差し込む光が神秘的な雰囲気を醸し出していました。「もし、あの雲の上に都市があったら…」という空想が、このAIアート制作のきっかけになりました。
古来より人類は空に憧れてきました。ギリシャ神話のオリンポス山、仏教の須弥山、宮崎駿作品に登場する「天空の城ラピュタ」など、雲上の世界は様々な文化で理想郷として描かれてきました。そんな普遍的なイメージを、現代のAI技術を駆使して表現できないかと考えたのです。
AIアート制作の最初のアプローチ
最初に思いついたのは、シンプルなプロンプト(AIに与える指示文)でした。
試行①
日本語:「雲の上に浮かぶ都市、優雅な建築、雲層を通す光、空中交通」
英語:"city floating on clouds, elegant architecture, sunbeams through cloud layers, sky transportation"
このプロンプトではあまりにも一般的で、個性が感じられない画像が生成されました。AIは「都市」「雲」「建築」「光」「交通」という要素を含めましたが、どれも表面的な表現に留まっていました。もっと具体的なビジョンを伝える必要があります。
プロンプトの進化:細部へのこだわり
次に、建築様式や雰囲気を具体的に指定してみました。
試行②
日本語:「雲の上に浮かぶ未来都市、ルネサンス様式とモダン建築が融合した白い塔、金色の装飾、層状の雲の間から差し込む光線、飛行船やドローンによる交通システム」
英語:"futuristic city floating on clouds, white towers with Renaissance and modern architectural fusion, golden ornaments, sunbeams piercing through layered clouds, transportation system with airships and drones"
このプロンプトでは、建築様式の融合という要素が加わりましたが、時代感が混在してしまい、統一感のある世界観を作り出せませんでした。また、「未来都市」という言葉があまりにも一般的で、AIの解釈の幅が広すぎたようです。
テクニカルな要素の追加
画像の質感や技術的な側面も考慮したプロンプトへと発展させていきました。
試行③
日本語:「黄金時代のような雲上都市、古代と未来が融合した白と金の建築物、層状の雲間から差し込む神々しい光、先進的な空中交通機関、8Kフォトリアル、映画的照明、被写界深度、細部まで作り込まれたデザイン」
英語:"golden age cloud city, white and gold architecture fusing ancient and futuristic elements, divine light rays penetrating layered clouds, advanced aerial transportation, 8K photorealistic, cinematic lighting, depth of field, intricate design details"
技術的な表現を加えることで、よりリアリティのある画像に近づきましたが、「古代と未来の融合」という概念が抽象的すぎて、一貫した美学を持った都市にはなりませんでした。また、「黄金時代」という表現も、特定の時代や様式を示しておらず、AIの解釈に委ねる部分が大きすぎました。
世界観の具体化
世界観をより具体的に伝えるために、文化的・歴史的な要素を追加しました。
試行④
日本語:「雲上に浮かぶ空中都市、ビザンチン様式とアール・デコが融合したエレガントな建築、純白と金色の塔、複数の雲層を通過する幻想的な光線、飛行船やグライダーによる優雅な空中交通、夢のような雰囲気、高解像度レンダリング」
英語:"aerial city suspended on clouds, elegant architecture with Byzantine and Art Deco fusion, pure white and gold towers, ethereal light rays passing through multiple cloud layers, graceful air transportation with airships and gliders, dreamlike atmosphere, high-resolution rendering"
ビザンチン様式とアール・デコという具体的な建築様式を指定することで、より一貫性のある美学が表現できるようになりました。しかし、この組み合わせだけでは、まだ「私だけの空中都市」という個性が足りません。また、「夢のような雰囲気」という表現も曖昧で、AIの解釈にブレが生じました。
文化的背景と物語性の追加
作品に深みを与えるために、文化的背景や物語性を加えました。
試行⑤
日本語:「天空に浮かぶ理想郷、和洋折衷の建築様式、白亜と金の尖塔が立ち並ぶ都市景観、朝霧に包まれた雲海から昇る光柱、伝統的な和船と未来的な飛行船が行き交う空、神秘的な雰囲気、写実的な表現、壮大なスケール感」
英語:"utopia floating in the sky, Japanese-Western fusion architecture, cityscape with white and gold spires, pillars of light rising through morning mist and sea of clouds, traditional Japanese ships and futuristic airships crossing the sky, mystical atmosphere, realistic rendering, grand scale"
和洋折衷という文化的な要素を加えることで、私の地元・下関の東西文化が交わる特性をAIアートに反映させようと試みました。しかし、「和船」という要素が空中都市のコンセプトと少し噛み合わず、違和感のある画像になってしまいました。
環境設定と時間軸の明確化
空中都市の環境や時間帯を具体的に設定し、より鮮明なイメージを伝えることにしました。
試行⑥
日本語:「夕焼けに染まる雲上の未来都市、白と金の流線型建築が並ぶスカイライン、複層の雲海から差し込む夕日の光芒、クリスタルのような透明な建造物、洗練された飛行装置と空中庭園、幻想的な雰囲気、映画のワンシーンのような構図、精密なディテール」
英語:"future city on clouds bathed in sunset glow, skyline with white and gold streamlined architecture, rays of setting sun piercing multi-layered cloud sea, crystal-like transparent structures, sophisticated flying devices and aerial gardens, magical atmosphere, cinematic composition, precise details"
夕焼けという時間設定を加えることで、より鮮明な視覚イメージを創出できるようになりました。また、「クリスタルのような透明な建造物」「空中庭園」といった具体的な要素も加わり、都市に個性が生まれ始めました。しかし、まだ他のファンタジー作品の模倣のように感じられ、私自身のオリジナリティが不足していました。
地域性と個人的なルーツの反映
私の故郷である下関の特性を織り込み、より個人的な作品に昇華させることを試みました。
試行⑦
日本語:「海洋文明の影響を受けた雲上都市、関門海峡を思わせる水路が巡る空中建築群、朝日に輝く白と金のタワー、霧と雲の層を貫く光線、海と空の境界を行き来する先進的な乗り物、水と空気を操る技術の象徴、神秘と科学の調和、フォトリアルな質感」
英語:"cloud city influenced by maritime civilization, aerial architectural complex with waterways reminiscent of Kanmon Strait, white and gold towers glistening in morning sun, light rays penetrating layers of mist and clouds, advanced vehicles traveling between sea and sky boundaries, symbols of water and air manipulation technology, harmony of mystery and science, photorealistic texture"
関門海峡という地元の地理的特徴を取り入れることで、より個人的なつながりを持った作品になりました。しかし、「海洋文明」「水と空気を操る技術」といった設定が複雑すぎて、一枚の静止画で表現することが難しいことに気づきました。
最終プロンプトの洗練
これまでの試行錯誤を経て、最も効果的な要素を集約した最終プロンプトを作成しました。
最終プロンプト
日本語:「壮麗な雲上都市、地上から高く浮かぶふわふわした雲の上に建つ、金と白の塔を持つエレガントで未来的な建築、複数の雲層を貫く幻想的な日の光、飛行船や空中車両による先進的な空中交通システム、夢のような雰囲気、フォトリアルな表現、映画的な照明、高精細な細部」
英語:"A majestic city floating on fluffy clouds high above the earth, elegant futuristic architecture with gold and white towers, ethereal sunbeams breaking through multiple cloud layers, advanced sky transportation systems with airships and flying vehicles, dreamlike atmosphere, photorealistic, cinematic lighting, high detail"
このプロンプトでは、これまでに見出した効果的な要素(白と金の建築、雲層を通る光、先進的な空中交通)を保ちながら、不必要に複雑だった設定を整理しました。「壮麗な(majestic)」「幻想的な(ethereal)」「夢のような(dreamlike)」といった形容詞は、画像全体のトーンを統一するのに役立ちました。
最終作品の考察
最終的に生成された「雲上の都市」は、私が思い描いた理想郷の姿を見事に表現しています。金と白を基調とした建築物は威厳と純粋さを象徴し、雲間から差し込む光は神秘性を演出しています。飛行船や空中車両は、この都市の先進性と同時に、どこか懐古的な雰囲気も醸し出しています。
最も印象的なのは、雲の表現です。ふわふわとした質感でありながら、都市を支えるだけの存在感を持っています。現実では不可能な光景でありながら、不思議と説得力のある空間が創出されました。
AIアート創作からの学び
今回の「雲上の都市」制作から、AIアート生成における重要なポイントがいくつか明らかになりました。
- 具体的なビジョンを持つこと:漠然としたイメージではなく、明確なビジョンをAIに伝えることが重要です。
- 言葉の選択の重要性:「エレガント」「壮麗」「幻想的」といった形容詞が、画像の雰囲気を大きく左右します。
- バランスの取れた詳細さ:細部にこだわりすぎると全体の調和が失われ、逆に抽象的すぎると特徴のない画像になります。
- 個性を反映させる工夫:個人的な経験や地域性を取り入れることで、他にはない独自の作品が生まれます。
- 技術的指示の有効性:「フォトリアル」「映画的照明」「高精細」といった技術的な指示は、画像の質を高めるのに効果的です。
まとめ:AIアートにおける創造性の新たな可能性
AIアート生成ツールは、私たちの想像力を視覚化する強力なパートナーです。しかし、優れた作品を生み出すためには、AIに適切な指示を与えるスキルが欠かせません。それは単なる技術的な問題ではなく、自分のビジョンを言語化する創造的なプロセスでもあります。
「雲上の都市」の制作過程は、プロンプトを通じてAIと対話しながら、自分の中にある漠然としたイメージを具体化していく旅でした。途中で何度も方向修正を行い、時には思いがけない発見もありましたが、最終的には満足のいく作品に到達できました。
これからもAIアートの可能性を追求しながら、技術と創造性の融合による新しい表現を模索していきたいと思います。皆さんも、ぜひ自分だけのプロンプトを作り、AIとの共創を楽しんでみてください。思いもよらない素晴らしい作品との出会いがあるかもしれません。
AIアートの世界には、まだ見ぬ風景がたくさん待っています。次回は、別のテーマでの創作過程をお伝えする予定です。どうぞお楽しみに!
創作のヒント:効果的なプロンプト構築のポイント
AIアートを作る際、効果的なプロンプトを構築するためのポイントをいくつか共有します:
- 主題を明確に:何を描きたいのかを明確に伝える(例:「雲上の都市」)
- 視覚的特徴を詳細に:色、形、材質などを具体的に(例:「白と金の塔」「ふわふわした雲」)
- 雰囲気や感情を伝える:作品の全体的な雰囲気(例:「夢のような」「幻想的な」)
- 技術的な指示を加える:表現技法や画質に関する指示(例:「フォトリアル」「映画的照明」)
- 不要な冗長性を避ける:簡潔かつ的確な表現を心がける
- 対立する要素の統合を慎重に:「古代と未来」のような対立概念は具体的な表現方法を示す
- 個性を加える:独自の要素や経験を反映させる
これらのポイントを意識しながらプロンプトを作成すると、より自分のビジョンに近いAIアートを生み出すことができるでしょう。
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