「感情を織る機械」—AIが紡ぎだす感情の物語AIアート, 創作

AIアートクリエイション

#AIアート
#StableDiffusion
#プロンプト
#感情表現
#タペストリー

「もし感情が見えるとしたら、それはどんな形や色をしているだろうか?」

ふとした瞬間に浮かんだこの問いが、今回のAIアート創作の旅の始まりでした。感情は目に見えず、触れることもできない抽象的なもの。しかし、私たちはそれを言葉や表情、時には芸術作品を通して表現します。今回は、その「目に見えない感情」を「織る」という物理的な行為と組み合わせた、「感情を織る機械」というコンセプトのAIアート作品の創作過程をお伝えします。

Stable Diffusionというテキストからイメージを生成するAIを使い、私の頭の中にあるイメージをどこまで具現化できるのか、そのプロンプト(指示文)の試行錯誤と進化の過程をご紹介します。

当ページのリンクには広告が含まれています。
目次

「感情を織る機械」という発想

私たちが日々感じる様々な感情—喜び、悲しみ、怒り、愛、不安—これらが目に見える形で表現できたら、どんなに面白いだろうと考えました。そこで思いついたのが、「感情を織る機械」というコンセプトです。

タペストリー(織物)は古来より物語や感情を表現する媒体として使われてきました。中世ヨーロッパの壁掛けタペストリーは歴史的な出来事だけでなく、人間の喜怒哀楽も織り込んでいました。この伝統的な芸術形式と現代のテクノロジーを融合させ、感情そのものを糸として織り上げる幻想的な機械を創り出したいと思ったのです。

「感情が色となり、糸となり、織物となって形を成す。その瞬間を捉えたい」

プロンプト作成の試行錯誤

Stable Diffusionで理想の画像を生成するためには、適切なプロンプトを考える必要があります。最初に思いついた単純なプロンプトから始め、徐々に改良を重ねていきました。

第1段階:基本概念の提示

最初のプロンプト:
感情を織る機械、タペストリー、感情表現
(emotion weaving machine creating tapestries from feelings)

結果:基本的な織機と布のイメージは生成されましたが、「感情」の表現が弱く、普通の織機のイメージに近いものでした。感情の視覚化が不十分で、機械的な要素が強すぎました。

第2段階:視覚的要素の追加

改良したプロンプト:
感情を織る幻想的な機械、色とりどりの糸、感情ごとに異なる色彩、魔法のような光る部品
(magical emotion weaving machine, colorful threads representing different emotions, glowing magical parts)

結果:色彩の表現は良くなりましたが、まだ「機械」と「感情」の融合が不十分でした。幻想的な要素は出てきましたが、感情が織られている「瞬間」の表現が弱いままでした。

第3段階:感情の種類と表現の具体化

さらに改良したプロンプト:
感情を織る幻想的な機械、喜びは黄金の糸、悲しみは青い糸、怒りは赤い糸、愛は紫の糸、魔法のように光る部品、感情が可視化されるタペストリー
(fantasy machine weaving emotions into tapestry, golden threads for joy, blue threads for sadness, red threads for anger, purple threads for love, magical glowing parts, emotions becoming visible in the tapestry)

結果:感情ごとの色分けがはっきりし、タペストリーの表現も良くなりましたが、全体の構図がやや混乱しており、焦点が定まっていませんでした。

第4段階:アート的要素と技術的指示の追加

技術的要素を加えたプロンプト:
感情を織る幻想的な機械、ファンタジー世界の織機、感情ごとに色が異なる光る糸、喜び・悲しみ・怒り・愛の感情が織物に変化する瞬間、詳細な機械部品、魔法の輝き、ドラマチックな照明、4Kフォトリアリスティック
(fantasy-like mechanical loom weaving emotions, different colored glowing threads for various feelings like joy, sadness, anger and love, detailed mechanical parts with magical elements, dramatic lighting, photorealistic style, 4K quality)

結果:かなり理想に近づきましたが、まだ感情が「織られている瞬間」の劇的な表現が足りませんでした。また、織機の細部と全体のバランスにも改善の余地がありました。

第5段階:最終的なプロンプト完成

完成したプロンプト:
A fantasy-like mechanical loom weaving a colorful tapestry with visible emotions, threads of different colors representing various feelings like joy, sadness, anger, and love. The machine has magical elements with glowing parts. Photorealistic style with vibrant colors and dramatic lighting, 4K quality.

結果:英語のみのプロンプトに切り替え、要素をシンプルに整理しながらも具体的な視覚表現を盛り込むことで、理想的なイメージが生成されました。感情が色鮮やかな糸となって織り上げられる幻想的な瞬間が表現され、機械と感情の融合が美しく描かれています。

プロンプト進化の気づき

この試行錯誤の過程で、いくつかの重要な気づきがありました。

1. 具体性の重要性

最初のプロンプトは抽象的すぎました。「感情」や「織る」という概念だけでは、AIにとって具体的な視覚イメージを生成するのが難しかったようです。感情ごとに色を指定し、「光る糸」「魔法の部品」など具体的な視覚要素を追加することで、イメージがより明確になりました。

2. バランスの取れた説明

プロンプトが長すぎると焦点が散漫になり、短すぎると情報が不足します。第3段階から第4段階への改良では、説明を整理しながらも重要な要素を残すことで、バランスの取れたプロンプトになりました。

3. 技術的な指示の効果

「4K」「フォトリアリスティック」「ドラマチックな照明」といった技術的な指示を加えることで、画像の品質と雰囲気が大幅に向上しました。AIに対して「どのように描くか」の指示も重要だということがわかりました。

4. 英語プロンプトの優位性

最終段階では日本語と英語の混合から英語のみのプロンプトに切り替えました。残念ながら現状のAIモデルでは、英語のプロンプトの方がより正確で質の高い結果を生み出す傾向があります。これは英語のトレーニングデータが圧倒的に多いことが理由と考えられます。

感情の視覚化 — 色彩と象徴

プロンプト作成の過程で、感情をどのように色彩や形で表現するかについても深く考えました。多くの文化や心理学的研究では、特定の感情と色彩の関連性が指摘されています。

  • 喜び/幸福 — 黄色や金色は太陽の光や明るさを象徴し、一般的に喜びや幸福感と結びつけられます。
  • 悲しみ — 青や灰色は雨や曇り空を連想させ、悲しみや憂鬱さを表現するのに使われます。
  • 怒り — 赤色は火や血を連想させ、怒りや情熱の象徴として広く認識されています。
  • — 紫やピンク、赤は愛や情熱を表す色として用いられることが多いです。特に紫は神秘的で深い感情を示します。
  • 恐れ — 黒や暗い青は不確実性や未知への恐れを表現します。

これらの色彩象徴を意識しながらプロンプトを構築したことが、最終的な画像の感情表現の豊かさにつながりました。

タペストリーという媒体の意味

なぜ「織る」という表現方法を選んだのでしょうか?タペストリーは、個々の糸が集まって一つの大きな絵や物語を形作ります。これは人間の感情が個々の経験や記憶から織りなされるプロセスに似ています。

また、織物は時間をかけて少しずつ形成されていくものです。これは感情が時間をかけて発展し、深まり、変化していく様子と重なります。一本一本の糸(個々の感情や経験)が絡み合い、複雑で美しいパターンを作り上げる—この比喩的な表現が「感情を織る機械」というコンセプトに深みを与えています。

AIと人間の感情表現

この創作過程で興味深かったのは、AIが「感情」という抽象的な概念をどのように視覚化するかということです。AIは感情を持ちませんが、人間が創作した芸術作品の膨大なデータセットから学習することで、感情表現の視覚的パターンを理解しているようです。

私が「喜びは黄金の糸」「悲しみは青い糸」と指示すると、AIはそれを適切に表現しました。これは人間の感情と色彩の関連性が文化的に共有されており、その関連性がAIの学習データに反映されているからでしょう。

しかし同時に、AIは私が想像もしなかった表現方法も提案してくれました。機械と感情という一見相反する要素を融合させ、幻想的でありながらもどこか現実感のある「感情を織る機械」を創り出したのです。

創作の旅を振り返って

今回の「感情を織る機械」の創作は、単なるAIアート生成の試みを超えて、感情表現についての深い考察の機会となりました。目に見えない感情を視覚化するという挑戦は、プロンプトの言葉選びという形で言語化し、それがAIによって視覚化されるという二重の変換プロセスを経ています。

最初のシンプルなプロンプトから、具体的で詳細なプロンプトへの進化は、私自身のビジョンが明確になっていく過程でもありました。最終的なイメージは、私が頭の中で思い描いていたものよりも豊かで複雑なものになりました。

「人間とAIの共創により、どちらか単独では生まれなかったような表現が可能になる」

これこそが、私がAIアートに魅了される最大の理由です。AIは私たちの創造性を拡張し、新たな表現の可能性を開いてくれます。

今後の展望

「感情を織る機械」というコンセプトは、さらに発展させる余地があります。例えば、複数の画像を生成して感情の変化の過程を表現したり、VRやARの技術と組み合わせてインタラクティブな体験にしたりすることも考えられます。

また、このプロジェクトで得たプロンプトエンジニアリングの知見を活かして、より複雑で抽象的な概念のビジュアル化にも挑戦していきたいと思います。例えば「時間の流れ」や「記憶の断片」など、日常では目に見えない概念の視覚化です。

AIアートの可能性は無限大です。これからも様々な概念や感情を視覚化する旅を続け、ブログを通じてその過程を共有していきたいと思います。

おわりに

「感情を織る機械」という一つのアイデアから始まり、プロンプトの試行錯誤を経て、最終的に鮮やかで印象的なAIアート作品が生まれました。この創作過程を通して、言葉とイメージの関係性、感情表現の普遍性、そしてAIと人間の共創の可能性について考えを深めることができました。

AIアートの世界は日々進化しています。テクノロジーの進歩とともに、私たちの創造性の表現方法も広がっていくでしょう。これからもAIと人間の境界線上で生まれる新しい表現に注目し、創作の旅を続けていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。皆さんも、身の回りの抽象的な概念をAIで視覚化してみてはいかがでしょうか?思いもよらない発見があるかもしれません。

 

コメントを残す




 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

山口県下関市に住む30歳のフリーランスデザイナーです。地元の大学でグラフィックデザインを学び、東京で広告業界での経験を積んだ後、2020年に下関に戻りました。趣味は写真撮影とサイクリングで、自身のスマートホーム実践記録を中心に、IoT技術の基本から最新トレンドまで、地域に根ざした視点から、下関市ならではの生活課題へのテクノロジー活用事例も紹介していきます。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次